熱中症事故防止について

 地球温暖化のせいか、夏に気温が35℃を超えることも珍しくなくなりました。新聞等の報道で
ご存じのように、夏期のクラブ活動や屋外行事などでは熱中症による事故が度々起きています。高
温条件下で激しい運動を行うことによって体温が急上昇し、さらに、湿度が高ければ汗の蒸散による
冷却効果が低くなって体温を下げることができなくなるからです。熱中症事故を防ぐためには水分
を十分補給するといった注意を守ることは当然ですが、危険を示す指標が身近になければ有効な対
策は難しいように思えます。そこで、WBGT (wet-bulb globe temperature)という「暑さ指数」が
使われるようになりました。

WBGTは日射条件下では
WBGT=0.7NWB+0.2GT+0.1NDB
ここで、NWB (natural wet bulb temperature)、GT (globe temperature)、
NDB (natural dry bulb temperature)
です。GT(黒球温度)というのはその名の通り、真っ黒の球体の中に温度計を入れて測定した温
度で、日光や周囲からの輻射熱を評価するためのものです。

gtsensor.jpg
 左の不気味な黒い大きな球が銅製の6インチ黒球
 右がLM35をポリプロピレン管の先端に取り付けた温度センサ
 台座はポリプロピレン棒を旋盤でテーパ状に削って作り、シリコンでセンサと黒球を接着固定した
 台座の基部は塩ビパイプに入るようにしてある
sensors.jpg
 屋上に取り付けた黒球

 さて、ここで問題になるのはNWB(輻射熱を防ぎ自然気流に曝露された湿球温度)です。湿球温
度は乾湿温度計についている湿球、つまり濡れた布で包んだ温度計の温度ですが、実はこの湿球温
度、リアルタイムに測定するのが非常に難しいのです。実際に精密測定するには、アスマン通風乾
湿計というゼンマイで動く小さな送風機のついた温度計を使います。そんなものを使っていたので
は当然リアルタイム測定など出来るわけがありません。モーターで廻すタイプもありますが、水の
補給など色々な問題があり、簡易な自動測定システムではとても使えるものではありません。そこ
で、湿度センサで測定した湿度と乾球温度から湿球温度を計算で求めることにします。実は、これも
またなかなか難しく、複雑な近似式を使って再帰計算を繰り返さなければ求められませんが、パソ
コンを使えば一瞬です(^^)v。

 このようにして求めた湿球温度と実際に測定した黒球温度を使って、WBGTを求めてリアルタイ
ム表示するシステムを作ったというわけです。
 本システムが設置されているのは屋上です。コンクリートの上ですから土の上と比べれば若干過
酷な条件ではありますが、テニスのハードコートや道路の上に相当すると思われます。

 メイン画面では、フロントパネル左下にWBGTのデジタル表示とインジケータがあります。数値
の増加にともなって、色が緑→黄→オレンジ→赤→紫に変化します。携帯画面にもWBGTのデジタル
表示とインジケータのアイコンがあります。

WBGTの値ですが、
21°まで  ほぼ安全
21〜25° 注意
25〜28° 警戒
28〜31° 厳重警戒
31°以上  運動は原則中止
26°を超えると熱中症患者発生数が増加することがわかっています。

本システムを屋外での実習やクラブ活動にご活用いただければ幸いです。

なお、熱中症については環境省のホームページに詳しい解説がありますから、是非ご参照下さい。
 環境省熱中症予防情報サイト
   http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/