光(電磁波)の種類

 紫外線環境保健マニュアルには紫外線の種類について詳しく解説されていますが、その前に「光」というものについて少し
補足しておきましょう。
 私達が「光」というと、大抵の場合は目に見える光、つまり「可視光線」のことをいいます。太陽の光はかすかに黄色っぽ
い白い光ですね。これは太陽の表面温度が6000Kであることによります。鉄釘をガスバーナであぶっていると、だんだん赤
く光ってきます。さらに熱をかけると黄色っぽい色に変わってきます。つまり、熱のあるものは光を出すわけで、これを黒体
放射といいます。出てくる光の色は温度に対応していて、温度が上がっていくにつれて、赤い光から青い光に変わっていきま
す。これは、「赤い光よりも青い光のほうがエネルギーが高い」ことに対応しています。太陽光の中に色々な色の光が含まれ
ていることを明らかにしたのはニュートンですが、私達も時々それを自然現象として実感することができます。もちろん、虹
ですね。虹は七色といいますが、実際には色の境目はほとんどなく、赤から紫へと連続的に変わっていきます。目に見える光
は紫色から赤色までで、波長でいえば400 nmから700 nmくらいになります。
 光は「横波」の性質をもっています。ギターなどの弦や糸ゴムを張ってビーンと弾いて震わせたところをイメージして下さ
い。振動の大きな「山」の部分と振動していない節がいくつかできますね?その山と山の間隔を「波長」といいます。光の場
合、単位は nm:ナノメートル(10億分の1 m)です。「波長が短いほどエネルギーの高い光だ」ということをよく覚えてお
いて下さい。
 今、問題にしている紫外線というのは可視光よりも短波長の光で、紫外線障害関係で問題にするのは波長でいえばだいたい
230〜400 nmの光です。私達のような光化学の研究者は波長で厳密に話をすることが多いのですが、皮膚医学関係ではその
作用と対応させてUV-C, UV-B, UV-Aという大雑把な分類をします(A領域(UV-A;波長315〜400 nm)、B領域(UV-B;
波長280〜315 nm)、C領域(UV-C;波長100〜280 nm))。このあたりは後でもう少し詳しく述べます。紫外線よりもっ
と波長の短い光を「真空紫外」とか「極紫外」と呼びます。さらに波長が短いのが「X線」や「γ線」です。真空紫外よりも
波長が短い光は通常、「放射線」として扱われます。
 一方、紫外線とは逆に、可視光よりも波長の長い光を赤外線といいます。赤外線も波長によって「近赤外」「中赤外」「遠
赤外」と区別することがあります。赤外線よりもさらに波長が長い光が最近話題の「テラヘルツTHz波」です。これより長い
波長の光は「電波」として扱われ、単位も波長ではなく振動数のHzが使われます。電子レンジやレーダに使われる「マイク
ロ波」は数十〜十GHzで、携帯の電波は1.3 GHzですね。

 このように、一口に「光」といっても非常に範囲が広く、その性質、とくに物質との相互作用についてはそれぞれ全く異な
ることが容易に想像できると思います。