古生態学は時間軸に重点をおいた生態学ですが、従来、時間や空間のスケールが、現世の生態学の対象とはかけはなれている場合が多かった。そのため、生態学会の中にあって存在感を十分に示せず、「別世界」としてとらえられることが多々あったようです。しかし、人間の一生を越えるような長期的な変化をとらえようとする場合には、「古生態学」的な手法はきわめて有効であることは言うまでもありません。
そこで、「『古生態学』は、生態学者の間ではどうも評判がよくないらしい」(杉田、高原 2001)という認識に立って、「古生態学」のなかでも時間・空間スケールが「現在」の事象をあつかう「生態学」に近い研究を紹介しつつ、「古生態学」と「生態学」との共通の議論の場をつくろう、と始まったのが、この企画です。
日本生態学会第50回大会 (2003年3月19日〜23日 茨城県つくば市 つくば国際会議場)にて。
詳しい日時は決定しだい,掲示します。
企画者 高原 光(京都府大院・農)・佐々木 尚子(京大院・農)
概 要
「火」は植生に影響を与える撹乱要因のひとつであり、たとえば北米では、生態系を維持する機構の重要な要素として位置づけられている。この「火」と植生との関係について、日本ではこれまで、100年以内の比較的短い時間スケールでの研究がすすめられてきた。また、100年−1000年の長い時間スケールでは、堆積物中に含まれる炭化片の量と植生との関係について、研究がすすめられつつある。この集会では、「火は植生をどう変えるのか?」をテーマに、異なった時間・空間スケールでの研究成果について話題提供していただき、「火」に対する植生の応答を、異なる時間スケー ルでとらえると何がみえてくるのか?という、分野を越えた議論の場をつくりたい。
演題
1.「炭からわかる火と植生の歴史−堆積物中の微粒炭分析による」 小椋 純一(京都精華大・人文)
2.「火事跡における植生の回復過程」 津田 智(岐阜大・流域圏科学研究センター)
参考:昨年の企画